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土地の香り、家の味 安部のぶさんの「あけび煮」 ほろ苦くて懐かしい里の味

安部のぶさん
安部のぶさん
朝日町にはアケビを食材とする『あけび煮』が伝承されていると聞き、町でも料理名人と評判の安部のぶさん(72)を訪ねた。
「まだ会社勤めをしていだころ友人と山さ取りに行ったことがあってよ。紫色のきれえなアケビが鈴なりで笑いが止まらんがっだけがら。 春の萌(もえ、アケビの若芽)もおひたしにして食べるとうめえでんなだ。こっちでは栽培もしとるんで、今は山さ行かねだども、やっぱ山の方がうめえねっす」
安部さんは、近所の栽培農家からコンテナ2杯ものアケビを分けてもらい、半分はタネとヘタを取って干し、半分は塩漬けにする。 カラカラに乾いたアケビは、何年でも保存がきくし、塩漬けの方は戻すのも早いので重宝する。
アケビに何種類もの野菜を詰め、煮しめ風にコトコト煮込んだものが『あけび煮』だ。 春秋のお彼岸と盆には欠かせない精進料理なので、安部さんは雪に閉じこめられる正月から3月にかけて作る。 「んだな。いっぺんに500は作るがったがな」

どっさり作って親戚や知人に配り、自家用には1個ずつラップで包んで冷凍しておく。
そのままかぶりつくには大きすぎるので半分に切ると食べやすい。野菜の旨みを引き立てているのは、舌にかすかに残るアケビのほろ苦さだ。懐かしい味である。肉類を使わないから冷めてもおいしい。最近はザク切りにしたアケビと野菜などを炒め煮したり、甘味噌味で作る家庭も多いという。 かつて山形市から米沢までの羽州街道を歩いた司馬遼太郎は小野川温泉で食べ、「牛の舌(タン)かと思って食ってみるとそれよりも旨く、きけばあけびの皮を油でいためてやわらかくしたものだった」と書いている。小野川温泉は最上川上流にあり朝日町からも近いが、あけび煮とは少し違う料理だったようだ。


 


秋にタネを抜いて軒先に吊し、
カラカラに乾燥したアケビの皮。
「あけび煮」レシピ
【材料】アケビ10個、押し豆、マイタケ、コンニャク、油あげ、ゴボウ、ニンジンを適量 ◎調味料は、しょうゆ、みりん、本だし少々、三温糖、ハチミ ツ、酢を加え、煮染め風に味付けする。
【作り方】干しアケビは、1週間ほど水に浸けて戻しておく。戻したアケビを水から茹で、沸騰したら中火にし、さらに30分間ほど煮る。茹でたアケビを3日間、毎日水を替えてさらす。材料の野菜は、短冊切りにしてアケビの中に入れ、全体をカンピョウで結ぶ。鍋にアケビを並べ、ひたひたにシイタケの戻し汁と水を入れ、20分間煮る。この後、しょうゆ半分と他の調味料を加えてさらに煮る。汁が半分になったら残り半分のしょうゆを加えて、汁がなくなるまで弱火にして焦がさないように煮詰める。

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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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