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リトルヘブン
剪定技術でリンゴの
減農薬栽培に挑む

「山の木を見ろ!」

りんご農家 高嶋幸四朗さん(48)
高島さんが丹精を込めて剪定したリンゴの樹は、両手を大きく広げたように枝を伸ばす。
樹下のクローバーは、保湿、地力のために種を蒔いて育てる。(和合平のリンゴ園で)

リンゴ
6月中旬、ピンポン球の大きさまで
成長したリンゴの実
リンゴの国内生産量は84万2100トン。県別で見ると山形県は第4位で5万2700トンを生産(2003年)。 山形県内では1位東根市、2位天童市。3位につけている。朝日町の生産量は8480トン。 全国を流通するリンゴの1%が朝日町産というわけだ。中でも朝日町で開発された「無袋(むたい)ふじ」は色づきや香り、 形の良さ、糖度の高さで市場でも大人気だ。
満開の花の時期から収穫期まで、朝日町の河岸段丘や丘陵地に広がるリンゴ畑は北国の山里ならではの景観で 見る人の心を打つ。しかし価格の低迷や高齢化などで厳しい環境に置かれた生産者にとっては、いかにして高品質、 高価格のリンゴを作るかが最大の課題である。

枝や葉を切る剪定技術を駆使して高品質のリンゴ作りに挑戦しているのが朝日町のリンゴ生産者、 高嶋幸四朗さん(48)だ。
リンゴ栽培は手間がかかる。厳寒期の雪下ろしや剪定、満開の花を摘む摘花、ピンポン玉大に育った実の摘果。 色づき始めると実を隠す葉っぱをカッティングして太陽の光に当てる。そして収穫。全て手作業だ。 この間、柔らかいリンゴの葉っぱに虫たちが寄ってくる。ウサギやネズミも甘い枝をかじりにくる。 だからリンゴが無事に育つよう消毒や施肥も繰り返し行わなければならない。
だが高嶋さんは「うまいリンゴを作るのは剪定しだい。剪定技術を確立すれば減農薬・減化学肥料栽培ができる」 と言うのだ。
同じ品種でも樹にはそれぞれ姿かたち、樹勢などの個性がある。しかし種子を残すため、根からの養分と葉っぱの 光合成によって作られたでんぷんをせっせと頂芽(ちょうが、枝の先端のこと)に運び続けている樹の生理は同じ。 よく観察して樹が伸びようとする力を促し、葉っぱの能力を高めて頂芽に実をつけさせるよう剪定するのが極意 らしい。かといって伸ばしっぱなしでは商品となるリンゴはできない。どの枝葉を残し、どれを切るか…。 剪定の可能性と限界を追い求める日々を支えているのはリンゴに向き合う情熱だ。

高嶋幸四朗さん
たかしま・こうしろう
1958年山形県東根市生まれ。村山農業高校卒。伝説のリンゴ職人斉藤昌美の弟子の一人である清野忠氏との出会いと、自然農法の実践者・福岡正信氏の理論に触発され、平成元年朝日町に移住してリンゴ栽培を開始。現在2,5ヘクタールのリンゴ園を営む。
朝日町在住。


5月中旬、良い実を付ける花だけを残すように摘花作業をする高嶋さんの手。
「リンゴが分かんねえ。分かろうと思ってやってる。だが、やればやるほどパニックになる。だから面白いんだよ」
栽培を始めて18年。最近ようやくリンゴの樹の言葉や気持ちが分かるようになったという高嶋さんだが、今年の豪雪で樹齢60年の最も大切にしていた一本が根元から折れた。『山の木を見ろ!』と語り、自然の姿に学ぶことを教えた師の言葉をあらためて噛みしめている高嶋さんである。

DATA 朝日町
 ●人口/8685人(2006年7月1日現在)
  高齢化率33.3%。
  小学校数4(うち分校1)、中学校1
 ●面積/196.73km2
 ●基幹産業/リンゴを中心とした果樹産業。
  特に「無袋ふじ」の最優秀産地として有名。


雪解け水を集めて流れる最上川。

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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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