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浮島伝説

夜中にお姫様が現れて…
 夕焼けに映える浮島の湖面。画面の中央やや左にある小さな島が、この日見ることのできた浮島。

語り部 最上俊一郎さん(58)

 近世、浮島には、出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)に
 参詣した人々が見物に立ち寄り、
 三十余あった宿坊は大いに賑わったという。

 語り部 最上俊一郎さん(58)

沼の鳥居さある島が本島で、出島とも言うでんだな。日照りの夏は出島に雨乞い壇を設け、 昔からうちの神社に伝わる龍を沈めだ水盤を置いで祝詞(のりと)さあぐると雨が降っだという。 私の代では雨乞いをしだごとはないけんども。

出島に向がって右側の入り江が水の湧く場所でな、浮島が集まるところ。島は朝、ここからスーッと出でぎで、 夕方さ、まだここさ戻ってぐる。風さないのにな。時には風に逆らって島は動ぐ。ちっこいもので直径約1メートル、 大きなものは畳3枚分ほどもあるな。島数が60を超すことから日本の「60余州」になぞらえ、昔は島の位置で吉凶を 占っとったそうだ。浮島さ乗るなんて、とんでもね。ご神体だがらな。

なぜ島が動ぐか、大学教授がやってぎで研究されたことがあっけど、いまだによく分からね。奇怪だと。 北海道にも浮島があるやに聞いとるけっど、そこはただ浮いでいるだけ。こごは動ぐ。早さはすごーく遅い時もあるし、 ちょっとばかり目え離しでるあいだ、どっか行ってしまうぐらい早いときもあるな。

朝、湖面に落ち葉が落ちでいる。夕方さ行ってみると、落ち葉が帯状に一列に並んでんだな。落ち葉は沼の中には沈まね。 それがな、どういうわけか翌朝になるとさっぱり、なぐなる。このへんの老人クラブのじっちゃんなんか、 夜中にお姫様が現れて、みんなきれいに掃いてぐれるんだあ、と言ってるみだいだな。

不思議なことはたぐさんある。中でも不思議だったのは、6つ7つの島がな、一列に列を組んでズーッと入り江の方に 動いているのを私自身が見だごとだ。遠くから見に来た人が動くのを待っとっても、全然島さ動かんときもある。 気の毒だけんどな。かと思うとスーッと人に寄ってきだり、目の前でクルクル回るのを見だ人もある。 なぜそうなるか、分がんね。
浮嶋稲荷神社宮司、山守別当・大行院第52代当主

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