「野菜が太った、これができたという楽しみがあらいな。それに水。上の岩の中から水が出るんよ。水ぐらいありがたいものはないわい。私、苦労しとんなはるお大師さんがいちばん好きなんよ。朝はお水とお茶とお線香あげてお願いするの、今日も一日元気で仕事をさしてください。夜はローソクともして、今日はありがとう、無事にすみました、お礼言うのよ」
雨の日に必ず聞くテープがある。「氷川きよしのズンドコ。好きじゃ、元気になる、言うたら娘たちがみな同じテープを送ってくれてなし」。きよしのポスターも貼ってある。その横に、娘がマジックで大きく書いた言葉が貼られていた。何でもかんでもやらないかん気持ちは捨てること、体をいたわって使うこと。
日々の厳しい労働を支える楽しみもある。「毎晩1本の缶ビールをオヤジと分け合って飲んでな。8時には寝ることよなし」
いたずらっぽい笑顔の中に、棚田とともに生きてきた女の根性がいぶし銀のように光っていた。 |
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大宿地区の伊原高一さんの田んぼでは、この日、最後の稲刈りが行われていた |
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