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「鬼の面」 娘を思い、母を思う 山賊はおべはちけて逃げ出した。

むかあし、お菊という娘が母とふたりで金言寺の大銀杏のふもとに暮らしちょりました。
田んぼ仕事の途中に空を仰ぎ見る時、丘の上で黄金に輝く美しい姿が目に入ります。 銀杏大権現様、と人々は親しみを込めて呼ぶのでした。

ある日、お菊は、遠く峠を越えた横田の酒屋へ奉公に出ることになりました。
「辛いこともあーし、えらいこともあーが、かあさんの面を見てせわーやけよ」
母は、自分の顔の面を作らせてお菊に持たせました。

泣きたい日、お菊はこっそり母の面を見てこらえました。ところが、下男がいたずら心で鬼の面と差し替えたのです。
事情を知らないお菊は、「おっかさんにかわったことがあーにゃ」と、酒屋の主人が「夜が明けてから」と止めるのもきかず、夢中で夜中の峠を走りました。
こっぽし語り部 佐佐木千代栄さん(81)
語り部
佐佐木千代栄(ささきちよえ)さん(81)

しかし、山賊に捕まって焚き火の番を言いつけられたからたまりません。 お菊は焚き火の熱さに耐えかねて、持っていた鬼の面を被って「かあさん」と泣きました。
すると、「鬼だあ」と山賊がおべはちけて逃げ出したのです。お菊も走ります。
もうすっかり夜は明け、なつかしい大銀杏が両手を広げるようにお菊を迎えてくれたのでした。

その後、母と娘は山賊の残した宝を役所へ届けに行くと「正直者の親子に、わしからの贈り物や」と言われ、それをもらって幸せに暮らしましたと。

こっぽし

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