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リトルヘブン
朝霧の中、子どもらだけでラジオ体操。

霧に包まれた幻想的な横田の町に、太陽の光が差し込む。
ここは「ヤマタノオロチ」伝説の地。四方を囲む山から吹く風が、田んぼの稲を揺らし、真っ白い世界を吹き飛ばす。

伝説の山に抱かれて建つ横田小学校の校庭に、地域に住む子どもたちが集まってくる。夏の朝といえばラジオ体操だ。
音楽が流れると、それまで校庭の砂で絵を描いていた子も、眠い目をこすっていた子も、手足を伸ばして体を曲げ、それらしい動きを始めた。
お手本役の大人がいないので、隣の子の動きを観察しながらの体操だ。
音楽が終わると、声も届かないほど遠く、運動場いっぱいに散らばっていた10人ほどの子どもたちが、パーッと集まった。

朝霧の中、子どもらだけでラジオ体操。
朝霧の中、子どもらだけでラジオ体操。
その中心にいるのが、若槻莉穂さん(六年)と松原由香子さん(五年)だ。
毎朝、みんなのカードにハンコを押す役目の莉穂さんは、皆勤賞だ。由香子さんも念のため、毎朝ハンコをポケットにいれてある。
「体操の後、月曜日は缶けり、金曜日は高鬼をして遊ぶ」というルールは子どもたちで決めた。友達に借りているラジカセを、由香子さんが大切に持ち帰る。

子どもたちだけで過ごす早朝の夏休み。朝日を受けて帰宅する子どもたちを、今朝も伝説の山々が見守っている。

読者からの便り
リトルヘブンを読むとしみじみ故郷の山野が懐かしく。「ありがとう」って言いたくなるのです。
(福岡市東区 S・M)

磯田和江さんが七輪であられを炒る姿の写真。遠い昔、亡母の姿がダブって想い出されました。あられが網の中でふくらんでゆくのがうかがわれます。なつかしい!
(東京都世田谷区 N・M)

冒頭のインタビュー第一声が、やわらかな関西弁のイントネーションで迫ってきたからもうダメ。一気にどこも余さず読了してしまう羽目に。
(東京都練馬区 J・Y)


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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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