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波田野喜代子(はたのきよこ)さんの「のっぺ」

波田野喜代子さん
波田野喜代子さん
軒先に凍大根(しみだいこん)が吊るしてあった。 雪囲いのしてある窓辺をうまく利用して、すだれのように吊り下げてある。 阿賀町では馴染みの光景だ。雪に照り返され、飯豊連峰の風に晒されて、大根はきゅっと縮こまっている。

鍾馗様のお祭りを次の日に控えた平瀬集落では、ご馳走作りに忙しい。 祭りには欠かせない「のっぺ」の作り方を、波田野喜代子さん(60)に教えていただいた。

「前の晩、鍋に半分の水を入れて、昆布とホタテの貝柱、煮干を浸しておきます。 干し椎茸と、乾燥きくらげも水でもどします」
喜代子さんが使うのは、直径30センチはある大鍋だ。 人参2本、ちくわ3本を、2〜3センチの薄い菱形に切っていく。 大小で30個はある里芋は、切った後で塩を少し振りかけておくと味が沁みやすくなる。 椎茸ときくらげ、ゆがいたコンニャクも同じ大きさに切っていく。

「あとは、ダシ汁を使って煮ればいいんだわ。 沸騰したら昆布と煮干を鍋から取り出して、人参、椎茸、ちくわを入れるの。 弱火でコトコト煮たら、ここで味をつけるの。 醤油にみりん、酒と塩、砂糖をほんの少し。 分量はわからないわあ。 わたし、舐めてみて足りなかったら足すんだわ」
その後で、水洗いで塩を落とした里芋とこんにゃく、きくらげを入れてさらに煮込む。

「銀杏や筍を入れてもいいし、鶏肉や鮭を使ってダシをとってもいいの。 なんだっていいんだわ」
食べる寸前に、人数分のうずらの卵とかまぼこを鍋に加えて、さっと火を通す。 温かいうちに器に盛り、ゆがいておいたキヌサヤを飾ったら完成だ。
祭りにかかせない「のっぺ」
祭りにかかせない「のっぺ」

かまぼこのピンク色とキヌサヤの緑色が、アクセントになっている。 里芋のとろみで、つるっと口に滑り込むようだ。 きくらげの歯ごたえ、里芋の甘み、こんにゃくの弾力などがいっぺんに楽しめて、優しい味わいだ。

ご馳走になっていると、玄関先が騒がしくなった。新潟市にいる息子と娘の家族が帰省してきたのだ。 明日の祭りには、鍋いっぱいの「のっぺ」もなくなってしまうのだろう。

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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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