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星 寿徳さん(71)

多発する水難事故に心を痛め
難所の岩場を一人で削った全海上人


ここ菱潟の全海堂には、全海上人の即身仏(ミイラ)が祀られております。 一六八七年(貞享四)に八五歳で入滅されたのですが、当時は土葬する決まりですから弟子たちは困ったんでしょう。 三年後に、ようやく津川の代官所に届け出たそうです。 弟子の枕元に全海上人が立って、遺言どおり即身仏にするように言ったという話も伝わっています。

全海上人は阿賀野川で多発する水難事故に心を痛めて、舟やいかだが遭難する岩場を削るなどした方です。 立派な僧侶だったというので、お堂に祀ることが許可されたんでしょう。 私が子供の頃は、お年寄りにくっついて毎月八日の御開帳に行ったもんです。 和尚様がお経を上げながら、即身仏の前に垂らされている幕をクルクルっと上げるとお姿が見える。 楽しみではあったけれど、怖くもありましたねえ。
雪に埋もれた菱潟全海堂。7月の大祭に即身仏のご開帳をする
雪に埋もれた菱潟全海堂。
7月の大祭に即身仏のご開帳をする

七月の大祭には、毎年着替えさせる全海上人の古い着物を燃やした灰を各家で持ち帰って、お守りとして大切にしました。 でも、一九六九年に即身仏の保存調査がありまして、全海上人をガラスケースで密封することになったんです。これで、千年は大丈夫ってことです。 ただねえ、十八戸の菱潟集落も高齢化が進んでおりまして、七十一歳のこの私が「若い衆」なんて言われるんですよ。 今では、年一度の大祭だけにご開帳をするようになりましたが、お堂を守っていくことも大変になっていきますねえ。

祭りに欠かせない「のっぺ」 TOP  1  2  3  4  5  6  7 「【人】 伊藤和夫さん」

発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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