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リトルヘブン
渡部広次(金工家・画家)

新潟県東蒲原郡鹿瀬町(現在は阿賀町)日出谷。 私が生まれ育ったふるさとである。 県の東部に位置し、明治19年に新潟県に編入されるまで長い間福島県(会津藩)に属していた関係から現在も生活や文化に会津の薫りが漂う。

平成17年4月、東蒲原郡の4町村が合併によって誕生した阿賀町は、 栃木、福島両県の県境にそびえる荒海山と猪苗代湖に源を発する阿賀野川と太古の自然が残る飯豊連峰に代表される山紫水明の地である。

大工の父は腕のいい職人で絵心もあったので、私も絵や物作りが好きになった。

中学時代、初めて実川を訪れ、奥入瀬に勝るとも劣らない渓谷を見た瞬間、強行軍だったことも忘れ、疲れがいっぺんに吹き飛んだ記憶がある。

後日、その風景を描いたとき、担任の先生に誉められ将来は絵が描ける物作りになりたいと思った。 そんな折り、担任から東京で金工家が弟子を募集していることを聞かされ、父母の反対を押し切り上京。 楽な生活ではなかったが、夜は絵の学校に通い、金工家、画家として寸暇を惜しみ努力しながら現在に至っているが、今も好きな道を邁進中である。

友人の計らいで再び実川を訪ねることができた。実に50年ぶりだった。話しには聞いていたが、 2軒をのこし下(しも)におりたということである。当然のことではあるが分校やお寺もすでになく、 ここがあの実川?とわが目を疑うほどの変貌だったが、集落の上手にある五十嵐家の重厚な中門造りはそのままだった。そして渓谷もまたしかりである。

時代は過ぎ、実川は一変したが五十嵐家とあの渓谷は往時のまま。他言無用の美しさである。次回はじっくり時間をかけ、カンバスにその美を描こうと思っている。

渡部 広次 わたべ こうじ
1942年新潟県鹿瀬町(現・阿賀町)に生まれる。
1970年にイタリアで開催された国際芸術メダル展でメダル博物館の永久保存作品となる。
2003年に天皇陛下古希お祝品のデザインと原型を制作。
その後も、皇后陛下古希のお祝品など皇室の記念品メダルのデザインと原型を継続して制作している。
2006年には、油彩と金工による20回目の個展を開催。今年11月3日よりギャラリー八重洲・東京にて油彩と金工による21回目の個展を開催予定。
日本美術家連盟会員、第一美術協会評議・常任審査委員、東京金銀器工業協同組合会員、ワタベ彫刻代表

読者からの便り
主人の姉が私の故郷奥出雲が載っていると送ってくれました。 大自然の恩愛の中に生まれ、生かされていた私であったと、改めて感謝の心いっぱいになりました。 今、心深く読ませて頂き胸熱くなるものを感じます。大きな勇気を頂きました。
大阪府豊中市 S・E

 「一年生はスマイル2号で近所付き合い」の三人の笑顔が、遠い昔のことを思い出させてくれました。  リトルヘブンを読む度に、母の故郷で遊んだ懐かしいことが、走馬燈のように目に浮かんでまいります。  土の香りも届けてもらっているようです。
東京都杉並区 I・K(68)

 「お神楽さん」に使われるしめ縄ないの様子がよく解りました。  三人で息を合わせて、「せーの」となう縄と若者たちの息吹が一体となって出来てゆく。  神々しい風と空気が伝わって来るようでした。
愛知県名古屋市 S・M(76)

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