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リトルヘブン
蛇がいろんな場面に出現し、刺激的

西村洋哉(ひろや)くん(10)は、その日朝から興奮していた。 午前10時に、西村家と付き合いのある電気屋さんが「お試し」ということで持ってきたのは、42型の大きなテレビ。 数日後に、買い取るかどうかを決めるという。 地上デジタル放送を見るために、リモコン操作の仕方を電気屋さんに教えてもらう洋哉くんの顔つきは真剣だ。

大豊小学校に通う洋哉くんには、中学3年生のお姉ちゃんとこの春から町内で働き始めたお兄ちゃんがいる。
「昨日、ツバメの巣の下に蛇がおったき、お兄ちゃんがスプレーかけて逃げるまで様子をみとった」。
洋哉くんの生活の中で、蛇はいろんな場面に出現する。 風呂場に現れたり、電柱にぶら下がっていたのが目の前に落ちてきたり。
「蛙がおると蛇も来るき、家の周りにおる蛙をたくさん集めて、飼ってる鶏に食べさせたんよ。でも俺、鶏がちょっと怖かった」。
その鶏は、1年半前に狸かハクビシンにやられて全滅してしまった。

地デジ放送は、洋哉くんにいろいろな新しい世界を見せてくれるかもしれない。 でも、洋哉くんの生活は、都会の子供たちから見たらよっぽど刺激的だ。

西村洋哉(ひろや)くん(10)
西村洋哉(ひろや)くん(10)

リトルヘブン余禄
田植えが終わったばかりの棚田に打ち付ける激しい雨を撮影した。 水面に当たった大粒の雨一滴一滴が、水紋を残してはね返り、一瞬空中に浮かぶ。自然界が演じる美しさに見とれた。 八畝を訪れた初日のことだ。

谷の遙か下を見ると、雨合羽を着た男が二人、豪雨の中で代掻きをしている。トラクターの運転がたどたどしい。

聞けば、結婚して高知市で暮らす娘の婿が、休暇を利用して田植えを手伝いに来ているのだと言う。

三時のお茶になった。ビーチパラソルの長い柄を地面に立て、その中で菓子パンを頬ばり、ポットの温かいお茶を飲む。 豪雨で煙り、パラソルの中がシルエットに見える。立ったままポットのお茶を差しつ差されつする舅と婿。

童話の世界が、目の前にあるようだった。
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)

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