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「いま、小鹿野町で」高橋桂太くん

柏沢の集落では、山間地に植えられた紫陽花が ちょうど見頃を迎えていた。次の週末には、地域で 花見の計画もある。多くの蛍が生息する、美しい沢 に恵まれたこの地域は、平成17年、両神村から小鹿 野町に統合された。
両神小学校5年生の高橋桂太くん(10)には、ひと つ心配なことがある。
昨年の台風で山崩れが起こり、家の裏を流れる川 の水量が激減してしまったのだ。
「お盆の時期に、川でマスつかみ大会と流しそう めんをするんです。こんなに浅くなっちゃって、今 までみたいに出来るのかな」
捕まえたマスは、そ の場で塩焼きにしてもらえる。
「近所の人が作って くれる焼きそばやカキ氷も美味しいよ」
大人も子 供も、みんなで楽しむ行事だ。
「夏はいつも、この川で泳ぎます。でも、こんな んじゃつまんないなあ」
今年はまだ、蛍を見ていないそうだ。 「サッカー選手になりたい」と宣言した桂太くん が、最後にぼそっと言った。
「将来、ちょっとだけ 遠いところに出ようと思う。秩父辺りかな」

高橋桂太くん
高橋桂太くん

リトルヘブン余禄
近所の子ども達までが「善ちゃん」と呼ぶ柴碕善 治さんに、彼が名付けた「賽の洞窟」を案内しても らった。
昔、この地方は秩父銘仙の原料として、どこの家 でも養蚕をしていた。今では杉山となった桑畑跡の 急斜面を、ぐいぐいと先に立つ善ちゃん。
進路を塞ぐ小枝を大鎌で切り落とし、斜面を踏み 固めて道を造ってくれる。約一時間、汗まみれに なって尾根まで辿り着くと、記者と私の分まで飲み 物を背負ってくれていた。八十四歳である。
ユーモアがあって、気配りがある。愚痴は言わな い、言い訳はしない。夜、カジカを見たことがない と言えば、懐中電灯を照らして、夢中で探してくれ た。
少年のような好奇心を持ち、義侠心がある。 その上に郷土愛だ。強きをくじき弱きを助ける秩父 困民党の生まれる風土は、健在だ。
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)

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