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リトルヘブン
 昔あるところに馬鹿な子供がおったげな。ふうん。ある日、おばあさんの家に泊まりに行き、ほっぺたが落ちるほどの、美味しいごちそうを食べたげな。ふうん。あんまり美味しいので、家で作ってもらおうと名前を聞くと、「だんご汁」と言われたげな。ふうん。馬鹿な子供は、名前を忘れんように、「だんご汁、だんご汁」と言いながら歩いて、橋のない川を「ぴっとこしょ」ちゅうて跳んだげな。ふうん。そしたら、「だんご汁」ちゅうことを忘れて、家で母親に「ぴっとこしょ、作っとくれ」ちゅうたげな。ふうん。その話を聞いた村の人たちは、だんご汁のことを「ぴっとこしょ」と、言うようになったげな。       
 ケッチリコ  
 ここらで「ぴっとこしょ」言うたかは、知らんのよ。ただな、わしらが子供ん頃は、テレビもなあで(なくて)、年寄りの話を聞くんが楽しみじゃった。聞いてる子供らはな、「ふうん」て相づち打つんだ。それが、聞くもんのエチケットじゃあって教えられたいな。  
 ところでよ、うちの屋号は「戸花」なんだが、わしは、ひいばあさんからひ孫まで、「戸花」七代の顔を知っとんだわ。ひいばあさんが死んだ時には、座棺桶に入れられて、野で焼かれるのを見とった。生まれたてのひ孫は、わしの顔を見て泣いとった。長生きさせてもろうたよな。

 
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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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