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リトルヘブン
歴史を刻む参道の石段と蚕影山神社の鳥居
むかぁーしインドに、金色姫っていうそれは美しいお姫様がいたんだと。お母さんが死んで、新しく来た継母が意地悪でなあ。継母は、姫を捨てようと、まずは熊の山に連れて行ったが、やさしい熊が姫をお城に連れて帰ったんだと。次に、首のながーいお化けや唐笠お化けのいる山に捨てたけど、また姫はお化けに助けられて帰ってきたんだと。それでとうとう継母はな、お城の庭におっきい穴を掘らして、姫を埋めてしまったんだわ。
 何も知らない王様が庭を見ると、大きな穴を掘った跡がある。不思議に思ってそこを掘ってみたらよ、なんと姫が生きて出てきたっちゅうんだ。全てを知った王様は、姫にこう言ったんだと。「お前はここにおっては、不幸になる」。姫は桑の船で流された。辿り着いたんが筑波の豊浦。蚕影山神社のあるとこだっぺ。漁師が見っけてな、助けたんじゃが、残念なことに姫はすぐに死んでしまったそうだ。そのお姫様の体に、白い虫がわいてよ、その虫っつうのがお蚕さんだったって話だ。蚕影山神社はそういうわけで、お蚕さんの始まりの神社なんだっぺ。お蚕さんは四回眠って繭になるっぺ。一回目は熊の山、二回目はお化け山、三回目は穴ん中。四回目は船だ。お姫様が、一回ずつ自分の経験を思い返して眠るんだ。四回目にお蚕さんが長く眠るんは、インドと筑波は、ながいながーい旅だったからだっぺ。
  「ごっこ(お化け)くっから早く目えつぶれ」ってさ、布団の中に入った息子らにこの話を聞かしたよ。ただね、私の作り話が混じってて、本当の「金色姫伝説」とは、ちっと違うよ。おどかして早く寝かせてえもんだから、お化けを登場させたしな。
語り部・皆川喜代さん
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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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