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リトルヘブン
米町の雪宮前で、バスケットボールを持つ小西凜太朗くん
 おじいちゃん、おばあちゃん、お父さんが見守る中での取材だった。小学校5年生の小西凜太朗君は、ミニバスケットボールに夢中だ。まずはルールについて。トラベリングやダブルドリブルの説明に始まり、審判に文句を言うのはテクニカルファウルになるなど、実際にジェスチャー付きで教えてくれた。NBA「シカゴ・ブルズ」のデリック・ローズ選手のファンで誕生日も同じこと、お父さんはマイケル・ジョーダンと誕生日が同じこと、次から次へと話は止まらない。
  所属するチーム「六郷アスパルズ」が、県大会を勝ち抜き、東京の代々木体育館で行われる全国大会へ進む。お父さんもおじいちゃんも果たせなかった夢、全国大会出場だ。父親の寛さん(50)は、チームのコーチ。祖父の榮之進さんは、凜太朗君に言わせると「超OB」だ。「天筆でもひらひらさせて応援しようかね」と、祖母のけい子さん(75)。「いけいけ凜太朗って、叫ぶのだけはやめてよね」。凜太朗君は、顔を真っ赤にして照れた。
読者からの便り
 子どもの頃に住んでいた福島を思い出しました。「お茶飲み」と言っていたのですが、おばあちゃんに付いて近所の友だちの家で、お茶を飲んでみかんを食べて…。子ども心に「早く帰りたいな」って思ったっけ。
 梅干しのシソを竹の皮で包んで三角形にして、角からチューチュー吸うおやつ。久しぶりに食べたいなぁ。  
茨城県土浦市 S・A(32)
 母の里でも「お蚕さん」を飼っていました。さん付けで呼ぶように、とても大切に育てていました。家中いっぱいに棚を並べて、自分たちの寝る場所もないほどに光や温度、桑の木にまで気を配って。子どもながらに「こんな虫ごときに」と思ったこともありましたが、お蚕さんの作り出す繭の美しかった事。とてもなつかしく思い出しました。お蚕さんの匂い好きでした。
名古屋市千種区 K・M(50)
 思い出しました。今では亡くなりましたが、祖父母の家に田植えや稲刈りの手伝いに行ったものです。小学生の私は、大きなビニール袋を持ってイナゴ捕り専門。
 金色の田んぼでのお昼は、大きなおにぎり、ゆで卵とタクワン。とてつもなく素朴でおいしかった気がします。
 夕食には、昼間捕ったイナゴが甘辛く佃煮にされ登場するのですが、どうしても食べられなかった記憶が甦ります。ああ、なつかしさ。
福岡県大野城市 F・S(36)


リトルヘブン余録
白壁の美しい蔵が街の随所にある。間口は狭く奥行きの深い店が連なる商店街。今号の取材地、六郷は古い歴史と文化を感じさせる街だ。古くは、佐竹氏の城下町であると同時に羽州街道の宿場として栄えた。
▼そんな六郷の路地の一角に、看板の出ていない小さなカフェ「gomashio kitchen」がある。前を通ってもそこがカフェだとは気付かない。民家の入口ドアの上にある丸い電球に「goma」とだけ書いてある。
▼店内には、不揃いで古いテーブルとイスがパラパラと配置され、やはり素っ気ない。質素な調度や色づかいは、フランスの田舎を感じさせる。若い夫妻が経営しているようだが、六郷の歴史ある町並みとフランスの田舎はミスマッチに思えた。
▼聞けば、夫人は隣町の千畑に生まれたと言う。二人は十年間ほど、東北の大きな町で暮らしていたが、「漠然と故郷に帰りたい」と思っていたところに、六郷に物件が見つかったのだ。
▼気負いを感じさせない若い夫妻のカフェは、居心地が良い。自らのライフスタイルは変えず、こんな方法で故郷に近づくことができるのだと教えられた。ランチメニューの一つ「くちぶえサンドイッチ」を頬ばると、フランスの香りがした。
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)
芥川 仁 オフィシャルサイト>>>

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