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リトルヘブン
ふるさとの未来 宍粟市立野原小学校4年生 自分の中にいる鬼を追い出す

4年生は、担任の大前英毅先生を囲んで5人で食べる。 宍粟市立野原小学校は、全校生徒33人。全員が、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒の3世代暮らしだ。この日の給食の献立は、ご飯、肉じゃが、鯖の味噌煮、キャベツの即席漬けだった。4年生は、担任の大前英毅先生を囲んで5人で食べる。「家で一番怖いのは誰だ」という話題で盛り上がりながら、鯖の骨もきれいにとる。誰ひとり、米粒一つ残さない。
「そうや、忘れとった。明日豆まき集会や」。食後、小椋雄斗君が、机の中から鬼の作品を取り出して仕上げにかかった。色紙を張りつけて作った雷様みたいな黒鬼には、"忘れ物をすぐする鬼"とある。蒐場奨悟君も慌てて机の中を覗きこみ、自分の鬼を出すとペンで清書をはじめた。"土日をのぞいて起こされないと起きない鬼"。「休みの日は、自然と5時半に目が覚めるんや。お母さんは眠いって言うけどな」
明日の豆まき集会で、自分の中にいる鬼を追い出すのだという。

読者からの便り
まるで映画を見ている様な気分で、すみからすみまで読み、ほっこりした気分。特に、連君が、お友達おばあさんの家でくつろいでいるのを見て、私も小学生の頃、お友達おばあさんがいた事を思い出しました。母子家庭で母はいつも忙しく、近くで山羊を飼っているその家では、温めた山羊の乳に、お砂糖を入れてごちそうしてくれるのです。座って飲んでいる私の向かいには、真っ白いひげのお爺さんが、無言で付きあってくれてました。
北海道石狩市 Y・E(61)
"おしよせ"という栄養&ボリュームたっぷりの料理を初めて知りました。心のこもったおふくろの味って感じですね。温かみのあるすばらしい品だと思いました。ぜひ食べてみたいです。でも、働いた後に、皆で食べるからこそ美味しいのでしょうね。
愛知県名古屋市 K・Y(23)
菊の花を抱いて微笑む後藤文子さんの写真に、一昨年九十九歳で逝った母の姿を重ね、目が離せませんでした。働きに働いたごつい手、深く刻まれた顔の皺。人生を、土と共に懸命に生き抜いてきた人の、すばらしい証しであり、本当に美しいと思います。
福岡県福岡市 M・S(75)
大隈四兄弟の家では、鴨を自宅でしめて食べるのですね。お父さまの捌きを見てのお子さんの感想のすばらしいこと。究極の食育ですね。
東京都世田谷区 Y・M(49)


リトルヘブン余録

 取材地の飯見集落では、ほとんどの屋敷に火事から家財を守る土蔵が建っている。五十四世帯の集落なのに、南側の地区だけで二坪ほどの防火用水が三つもある。道端の角には、赤い消火栓がいくつも設置されている。子ども等は一年中、毎夕、火の用心の夜警を欠かさない。
▼昭和五十六年十二月の地元紙に「八十年間も火事のない村」として、飯見集落が紹介されている。現在まで、すでに百十年間も火事がないのだ。その記事によると、明治三十年頃、藁葺き屋根の民家から出火して全焼。この火事で、水の不便な飯見地区に、防火意識が盛り上がり、夜警が開始とある。
▼長老の井原博之さん(84)も、尋常小学校の頃は、夜警に回った。「六年生を上がる折に、婦人会が寿司したり、ハンカチ買うてくれたり。夜警のお礼いうて、してもらいよりましたわ」「喉が渇くで、塩マス食うたらあかんど、言うたりしよったね。水がないで、余計に夜警でも熱心にしよったんじゃろ」
▼水に不便な飯見集落は、世紀を超えて一致団結し火事を防いできた。その住民の連帯感は、節分祭で見せた飯見の人々の信心深さと仲睦まじさで支えられている。
【訂正】18号の記事「ふるさとの未来」に登場していただいた大隈四兄弟の姓名が、大隅と間違えていました。訂正いたします。

 
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)
芥川 仁 オフィシャルサイト>>>

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