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リトルヘブン
土地の香り 家の味 秋津ミサヲさん(82)の「こづゆ」 貝柱がたっぷり、上品なうまみで奥深い

 「今年も正月と節句ん時に作ってんけんじょ、うんめえ言うて孫たちも食ったな」。会津の郷土料理こづゆは、帆立の貝柱やキクラゲを入れて作る特別な日のもてなし料理だ。  ひとり暮らしの秋津ミサヲさんは、いつでも作れるように材料を常備している。「ギンナンと里芋は冷凍してあんだ。ギンナンは殻付きをフライパンで炒った後、湯呑み茶碗の底で潰(つぶ)してな、中の薄皮がちょっこら取れねえべして、湯ん中さ入れっとはがれんだ。里芋もな、皮むいて塩水さ漬けてからザックザック切って冷凍すんの。秋にやっとけば、台所で冷てえ思いせずに料理出来るべ。おれ、ずるいこと考えてんだ」。輪切りにした小ぶりの里芋40個は凍ったまま使う。ギンナン40個、人参1本、椎茸2枚、糸こんにゃく2袋、鳴門巻1本。他に帆立の貝柱15個、キクラゲと豆麩(まめふ)はガバッと3つかみほどの分量を、それぞれ水でもどしておく。

会津のもてなし料理「こづゆ」
会津のもてなし料理「こづゆ」
 
自宅の縁側で秋津ミサヲさん
自宅の縁側で秋津ミサヲさん

 「帆立を手でほぐして、鍋さいっちくなんしょ(入れてください)。イチョウ切りの人参、千切り椎茸、5センチに切った糸こんにゃく、キクラゲを一緒に煮るべ」。鍋に半分の水を入れ、貝柱の戻し汁(400cc)も加えて火にかける。里芋を加えて柔らかくなったら、ギンナン、薄切りの鳴門巻、豆麩を入れる「味は薄いほうがええ」。うまみダシを小さじ2杯振った後で、砂糖小さじ4杯、塩小さじ1杯、出汁しょうゆと酒を、トクトクっと大さじ5杯分くらい回し入れて、強火のままで味を馴染ませた。朱塗りの小さな漆器に盛っていただくのが会津の流儀だ。  とろけそうな里芋の甘みと、ギンナンの苦み、キクラゲの歯ごたえがいい。たっぷり入れた貝柱の上品なうまみが会津文化の奥深さ。  「何か作っときはな、わ(自分)がいっぺん(1回)食うほどとって、あとはくっちやんだ(あげるんだ)」。大鍋にいっぱい。30人分はありそうだが、茶飲み友だちに配ってみんなで楽しむのだという。

 
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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
Photography:Akutagawa Jin  Copyright:Abe Naomi  Design:Hagiwara hironori