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リトルヘブン
ふるさとの未来 高橋瑠貴(るき)くん8歳&光璃(ひかり)くん7歳

4年生は、担任の大前英毅先生を囲んで5人で食べる。  少年らはマリオに夢中だ。カメラマンのおじちゃんがレンズを向けても、ちらっと見るだけで手元のマリオゲームが気になってたまらない。「将来の夢はね、ゲーム機になること。違う違う、ゲーム機を作る人になりたい」と兄の瑠貴くん。「えーっと、こんなゲームを作りたいんだ」と、鉛筆を持って絵を描き始めた。四角い箱からにゅっと何本も手が伸びている。「自分のキャラクターを作ってバトルする」という説明をつけた。  去年のクリスマスに、ふたりの枕元に念願のゲーム機が置いてあったのだ。学校から帰ったらまず宿題をして、それからお母さんに怒られるまでゲームをするのが楽しみだ。  「山ん中で遊ばないの」と聞くと、「熊が出るんだ」「そうそう、近くの柿の木に爪の跡があったって」「花壇のところにうんちがあってね、柿の種があったから、熊のだよ」。  お父さんと一緒にテニスをするのと、兄弟で「戦いごっこ鬼ごっこ」をするのも好きだと聞いて、ちょっとほっとした。

読者からの便り
雪の中の野菜を掘り出す事。小さい頃に父母がやっていたのを思い出します。雪の中の野菜は凍らないのですよね。大根、人参、ネギ等。  小学校の冬の給食はみそ汁でした。子どもの母親が当番で学校へ作りに行くのです。お弁当を持って、学校で温かいみそ汁を頂きました。煮干しの出汁で、少々魚の匂いが強かったのを覚えています。 愛知県名古屋市 H・K(61)
東京生まれの私は、東京のザワザワした場所での暮らし。憧れますね、しっとりした地域での暮らし。でも、暮らしを変えることは無理ですね。地域との繋がりが大事ですね。「自分の中にいる鬼を追い出す」を読み、来年の節分は、私も自分の中に住んでいる鬼を追い出せるかな。 東京都葛飾区 S・M(63)
節分祭・焚き火の輪の写真は、はるか昔のご先祖様を敬慕しながら、赤々と燃える焚き火を囲んで御神酒をいただく……。これを見て、私は、レンブラントの「夜警」を想い出しましたぞな。 兵庫県明石市 F・S(68)
子どもの頃、近所の親戚の家で豆まきをしたのを想い出しました。雨戸を立て部屋を真っ暗にし、飛んでくるお菓子やおひねりを手探りで探すもので、本当に楽しかったのを今でも覚えています。 兵庫県神戸市 H・M(54)


リトルヘブン余録

小雨が降っていた。集落の真ん中に設置された電柱のスピーカーから有線放送が流れてきた。「本日で、東日本大震災から二ヶ月が経ちました。震災で亡くなられた方々に慰霊の黙とうを捧げるため、午後二時四十六分よりサイレンを鳴らしますので、お知らせ致します。以上、役場災害対策本部でした」
▼田んぼや、畑に人影はない。地元の人々が「宝よ」と自慢する磐梯山が霞んでいる。昨冬の大雪と福島原発事故の影響で、今年の田植えは、例年より一週間ほど遅い五月二十日前後になる。ようやく粗代掻きが始まった。「買ってもらえるのか」と、不安を抱えながらの田植えになるのだ。
▼夏野菜のネットを準備している夫婦がいた。「無理して会社を休んだから、雨でも仕事をしないと時間がないんです」と、ぐっしょり濡れている。遠くからサイレンの音が聞こえてきた。男性は、倉庫の軒下へ行き、頭を垂れて手を合わせた。その後方で、夫人が黙とうをしている。
▼会津美里町では、五月十六日現在で百三十二人の被災者を町の施設に受け入れ、五月末完成予定で被災者用仮設住宅二百五十戸を建設している。全国ニュースにはならないが、暮らしの細部に忍び寄る大震災、特に放射能被害の影響が、春爛漫に見えた会津美里町の背後にもあることを忘れまい。

 
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)
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