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お茶を飲みながら お亀池の伝説 語り部 細谷 善一(ほそやぜんいち)さん(96)
亀山(849m)からお亀池を望む。青蓮寺川(しょうれんじがわ)に沿って雲海がたなびく下に太良路集落は在る
語り部の細谷善一さん
語り部の細谷善一さん
  

お亀池の伝説ちゅうのは、この辺のもんは皆知っとる話で、わしも小学校の時分に先生に教えてもろうたんやで。
昔な、ある家で嫁さんをもろうたんやけど、その嫁さんが昼間家におらんと、いつも留守にしとる。子どもが出来たんになあ、乳も飲まさんと家におらん。どうも、亀山の麓の池に行っておるちゅうことでな、ある日、泣き止まん子どもを連れて父親が池まで行ったんやて。そん時は、嫁さんが乳を飲ましてくれたっていうんやな。でも、「もう、ここには来んなっ」て言われたちゅうことや。
そいでも、子どもが泣いて泣いてしゃあないもんやから、父親はまた連れてったんや。そしたら、嫁さんが「来んな言うたやろっ」て、えろう怒ってな。大蛇になって追いまくったちゅうねん。
そん時、大蛇が大きな口を開けたんで「大口」ゆう名がついたとこがあんねん。畑がある場所や。大蛇が立ち上がったところは「タテホリ」ゆうしな、大蛇が喉渇いたさかい、水飲んだ場所が「水ノミ」や。そこは、今でも水が湧いてまんのや。ちっさい池もありまんねやで。
大蛇になった嫁さんの名前が、お亀やねん。せやから、池の呼び名も「お亀池」や。

そん家の脇に、水が湧くところがあってな、お亀池の水がそん家に出たんやて人は言うんや。なんや、お亀池にモミ殻を流したら、そこから出てきたゆう話やけど、どうやろなあ。
お亀池はな、瓢箪(ひょうたん)の形になってまんのや。今でこそ葦が茂って水がよう見えんけどな。昔は、一メートルもある大きな鯉が泳いどって、三重県の太郎生(たろお)へ行く峠からよう見えたんやで。大きな蛇もおったで。なんや、妙な伝説があるもんやなあ。

 
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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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