今号を編集しながら、三ページ「里人に聴く」でお伝えした猪猟を、「楽園」の営みとして読者に受け止めてもらえるか少々不安があった ▼狩猟は、自然の中で暮らす必須技術と冬のタンパク源を摂る食文化として、山間地域に連綿と受け継がれてきた。自然の中で、ただ暮らせば、自然の豊かさを享受できるものではない。日常の弛まぬ労働と継承されてきた地域文化が織りなして、初めて達成できる豊かさだ ▼今回の取材は、十一月十五日の狩猟解禁日前だったので、実際の狩猟とは異なり、田畑を荒す野生の動物を捕らえるため、仕掛けた檻に入った猪の解体だった。太良路地区の田畑は、金網か防獣網で囲まれていた。猪と鹿の害から農作物を守るためだ ▼研ぎ澄まされた小さなナイフ一丁でおこなう解体作業を間近で見せて貰った。猪の体を熟知している首藤義典さんの手際の良さに見入った。幾つかの臓器は猟師たちが、内臓はカラスやサワガニ、狸など山の生き物たちへ、肉は地域の人々と一緒にボタン鍋でと、分配された。残酷という理由で、このような山の技術や文化を回避するならば、やがて人間が生きる本質は見えなくなる。目を背けず、人が生きる技術と文化を見つめなければと思う。
【訂正】21号一ページに掲載の写真説明文で「トノサマバッタ」とあるのは誤りで、正しくは「ツチイナゴ」でした。訂正いたします。
|