あるところに、ハチーコというハチの子どもがいました。ハチーコには、ハチトーというお父さんハチと、ハチカーというお母さんハチがいました。ある日、ハチーコはハチミツを食べようと早起きをしました。そして、ハチミツが入っている棚のところに行きました。棚の扉を開けて、ハチミツ壺の中身をのぞいてみると…なんと!ハチミツがないではありませんか!ハチーコは、大急ぎでハチミツ壺をひっつかみ、バンッと扉を開けて家を飛び出していきました。
ハチーコは、すごい速さで飛んでいました。すると、どこからともなくハチーコを呼ぶ声が聞こえてきます。
「ハチーコ、ハチーコ。」
上を見上げると、太陽さんがニッコリと笑っています。
「今、僕を呼んだの太陽さん?」
ハチーコは太陽さんに聞きました。
「ああ、そうだよハチーコ。それにしても、こんなに朝早くどこへ行くんだい?」
太陽さんに聞かれたハチーコは、顔を真っ赤に染めて答えました。
「朝、早起きしてハチミツ食べようとして、壺をのぞいたら、ハチミツがなかったんだ。だから、これからハチミツ屋さんに行こうと思って。」
「ああ、それで急いでいるのか。」
太陽さんはクスリと笑いました。
「あっと、早く行かなきゃ。じゃあね!太陽さん。」
ハチーコは、そう言ってから飛んでいきました。太陽さんは、ハチーコを笑顔で見送りました。
次にハチーコは何もない平地に出ました。
「あれ?ハチミツ屋さんってどこだっけ?」
ハチーコがキョロキョロ辺りを見回していると、向こうからハチーヤおばさんがハチミツ壺を持ってやってきました。
「あら、どうしたの?ハチーコ。ハチミツ壺なんか持って。」
ハチーヤおばさんは不思議そうな顔で聞いてきました。
「おばさん、ぼくハチミツ屋さんに行くところなんだけど、ハチミツ屋さんってどこにあるの?」
「あら、珍しくおつかいなの?」
ハチーヤおばさんはフフッと笑いながらまたもや聞いてきました。
「違うよ。ぼく、朝早く起きて、ハチミツを食べようとしたんだ。」
「それで?」
「そしたら、ハチミツがなかったんだ。」
「だからハチミツ屋に行くのね。いってらっしゃい。」
「だーかーらー、道がわからないの!」
「ああ、そうだったわね。ここをまっすぐ行ったら森があるわ。そして、森を抜けると看板があるからわかるはずよ。」
「ありがとう、おばさん!あっ、早く行かなきゃ!」
ハチーコはビュン!と飛んでいきました。
「あっ、今日はクイズデーでクイズに正解しないとハチミツがもらえないってことを言っておくのを忘れたわ。」
ハチーヤおばさんは、ため息をついてから家へと帰りました。
ハチーコは、ハチーヤおばさんに教えてもらったとおり、森に入りました。
「あっ、ハチーコだ。」
ハチーコのいとこ、マッパチが言いました。すると、木の陰からコッパチとヤッパチが出てきました。
「ハチーコ、朝早くどこ行くの?」
「ハチミツ屋さんに行くんだ。マッパチ達こそこんな朝早く何をしているんだい?」
ハチーコが聞くと、コッパチが、
「僕たち、ヤッパチのペンダントを探しているんだ。よかったら、 ハチーコも手伝ってくれないかな。」
「ごめん、急いで行きたいんだ。」
ハチーコが行こうとすると、ヤッパチが、
「おーい、ハチーコ。今日はクイズデーだぞ。」
「クイズデー?なに、それ。」
ハチーコが首をかしげて聞いたので、ヤッパチは驚いて言いました。
「ハチーコ、本当にクイズデーを知らないのか?」
「うん。」
ヤッパチは、信じられないといわんばかりに首を振りました。
「クイズデーってのは、クイズに答えて正解しなけりゃハチミツがもらえないんだ。」
「へぇ!知らなかった。ありがとう。ヤッパチ。」
ハチーコが森を抜けようとしたそのときです!
「ウワァ!ネコーザだぁ!」
というマッパチの叫び声が聞こえてきました。ハチーコは急いで叫び声のほうにかけつけました。
「マッパチ!今助けてやるから待ってろよ!」
ハチーコは猫のネコーザの背中をプスリと刺しました。
「ニヤァァー!」
ネコーザは、背中のすり傷に針が刺さって叫び声を上げました。ネコーザは、ハチーコがもう一発と背中に向かってつっこんでくるのを見て急いで逃げていきました。
「へっ、どんなもんだい!」
ハチーコはネコーザの背中に向かってアッカンベーをしました。
「おっ!」
ハチーコは、きらりと光るモノを見つけました。
「これ、ヤッパチのペンダントか?」
きらきらと光る、しずくのようなモノが、十個ぐらい連なってできたペンダントでした。
「うん、それ僕の。ありがとう、ハチーコ。」
ヤッパチは、ペンダントを受け取ると家に帰っていきました。
「おっと、早く行かなきゃ。バイバイ、マッパチ、コッパチ。」 ハチーコはマッパチとコッパチに手を振りながら森を抜けました。
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