昔、城内(じょうない)のお城に、玉山どいう殿様ァいでな、その殿様ァお城から出はる時、十人もの家来連れて歩いだもんだず。 ある時、殿様ァ、御堂村の岩崎から、おれんこズ娘っこもらって来た。 力持ぢの角兵衛ァ、その娘っこば、めげがっていで(可愛がって)、力授げだもんだど。 「我は殿様の娘なあり、誰もはむかってはならん」って、おれんこァ、道歩ぐ人ば、ぼってだすて(追い出して)、べご(牛)も馬っこもひねりつぶした。
ある時ァ、姫神山サ上がって、てっぺんの大ぎな岩かづんで(担いで)、飛ぶように下って来て、田端の家の横サ、どっかと下ろすて、 枕にしてぐうぐう、いびききゃで寝でらけ。
これには殿様も、どんでェすて(驚いて)「こりゃ、天狗のゥまれかわるだ(生まれ変わりだ)」と心配していだど。 桜も咲いだ花見どき、観音堂の前サ、大ぎな穴(落とし穴)サあった。おれんこァ、その穴の中サ落ぢてしまったんだど。
「俺の力ば、誰サも授げねェ。玉山からは力持ぢ出さねェ」って、おれんこァさがんで(叫んで)まるで光り物でも飛ぶように、 青森の三戸の方サ、びらっと飛んで行ったもんだず。
後からのことだども、三戸ぬァ、おれんこ祀ったおれん大明神があってな、相撲の強え、横綱が出はるようになったど。 玉山からは、力持ちァ出はらなぐなったもんだどサ。
どっとぱれ
素朴味「そばもち」
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「石川延子さん(78)」
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