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リトルヘブン
土地の香り 家の味 沼田イトさんと大野松子さんの煮込みうどん 何が何でも毎日うどん食べなきゃ太った麺はとろけるような舌触り

 白い花をつけた樹齢100年の柊(ひいらぎ)が、ジャスミンのような甘い香りで迎えてくれた。宇山和代さん(63)の家の周りには、ひときわどっしりと実をならせた柿の木や、柚子の木、濃いピンクのサザンカが訪れる人の目と嗅覚を楽しませてくれる。「太良路に伝わる料理っていうんは、思い付かんわあ」と首をひねる和代さんに、この季節に味わい深くなるかぼちゃのスープを作っていただいた。
材料は、かぼちゃ2分の1個、玉ねぎ3個、バター25グラム、固形スープの素2個、生クリーム200t。「かぼちゃは、皮があると色が悪うなりますねん。皮を全部むいて種とワタを取って一口大に切ります。玉ねぎは薄切り。鍋に火をかけてバターが溶けたら、かぼちゃと玉ねぎを一緒に炒めます。その後は、鍋にひたひたの水を入れ、固形スープの素を加えて火にかけておいたらええんですわ」。
グツグツ音を立てる鍋の横に立っていると、話題は、嫁に来た年に参加した「村民体育大会」のことになった。「曽爾村内の各地区で競うんやけど、嫁に来た最初の年は、皆に期待されるやろ。どの程度なんやろって、注目されるんですわ。緊張してな、ボールついて背中の籠(かご)に入れる競技で、ボール入れやんと籠が顔に被(かぶ)さって笑われましたわ」。
話に夢中になって笑っている間に、鍋の中のかぼちゃが程よく溶けていた。少し冷ましてからミキサーにかけ、ホーロー鍋に移して再び火にかける。塩を小さじ半分程入れ、生クリームを200t混ぜて、ひと煮立ちしたら火を止めて出来上がり。畑で穫ったパセリを刻んで、スープに散らす。
あっさりとした甘みと栗のような香り。水の量を控えめにした分、濃厚に仕上がった。和代さんお手製の柚子味噌を塗った焼きおにぎりと一緒にいただいた。スープの赤味を帯びた黄色が、窓の外に見える山の景色と重なって、秋をいただいている気持ちになった。

沼田イトさんと大野松子さんの煮込みうどん
宇山和代さんのカボチャスープ
  沼田イトさん(左)と大野松子さん
宇山和代さん
 
 
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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
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