丘の上のみどり色の屋根の家には、せまいけれど日当たりのいいお庭があります。
花ちゃんの家です。家族はおとうさんとおかあさんと智くん、そして花ちゃんです。
庭のテラスに面した大きなガラス戸の内がわは、冬は暖かい日ざしがいっぱいにあふれ、夏は庭の木々がしげって、風通しのよい日かげなります。花ちゃんの指定席です。
«花ちゃんや、あんたは気持ちのいいところをよく知ってるわね»
去年の秋になくなったおばあちゃんは、いつもそう言っていました。おばあちゃんは足が少し悪かったので、ほとんどお家にいて、時々お庭を歩くほかは、リビングのソファにすわってテレビを見ていました。
おばあちゃんが急になくなって、花ちゃんはさびしい冬をすごしました。
花ちゃんはシマシマのねこです。昼間はいつもおばあちゃんと一緒だったのに、今は花ちゃんだけです。指定席でお昼寝していると、おばあちゃんといるような気持ちになりますが、目をあけるとやっぱりいないのです。そんなとき、花ちゃんは顔を上げて、ぼんやりとお庭をながめます。三月になったばかりのお庭はまだ冬の色です。
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