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男床の奥の間から女床の間を見る喜久雄さん |
奥の間の女床に、鶴の絵の掛け軸がかかっている。「普段はこっちさ来ねえから、まだ正月のまんまだ」と、佐藤喜久雄さん。違い棚がある隣の男床で神主さんにお祓いをしてもらい、家族そろって女床の間でおせち料理を食べるのが佐藤家の正月だ。「嫁に来っ時、人が亡ぐなった時、玄関でなく女床の間から出入りすんです。私もここさから入ったの」。五十年前の結婚式の写真を治子さんが見せてくれた。黒の紋付、髪を島田に結った治子さんの前には、鯉の旨煮や卵焼き、こづゆなどのご馳走が並ぶ。「家さ着いたら中宿(なかやど)の間で一服して、準備さ整ったら奥の間でお祝言をあげるんです。余興の途中に、私だけ仲人さんに連れられて勝手という大広間で〈なかまたけっこ〉しました。ソバ打ったり餅ついて手伝ってくれた近所の人に挨拶することを〈なかまたけっこ〉言うんです」。
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14部屋100畳以上の茅葺き屋根の家 |
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