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老人クラブ仲良し4人の「かけ和え」

薄い雲に覆われた肌寒い朝、井手野公民館にコンコンと軽快なリズムで包丁の音が響く。 老人クラブのゲートボール仲間でもある水田八重子さん(73)、徳川初枝さん(71)、豆田絹江さん(69)、井手野恵美子さん(69)の4人が、郷土料理の「かけ和え」を作っている。 祭りで振舞われる料理として知られるが、どこの家庭でも普段によく作る人気の一品だ。

「いま一本、人参入れてもよかったな」。
徳川さんが言うと、
「うんにゃ、これでよかよ」
と水田さんが返す。用意されたのは、大根2本、人参1本、中くらいの大きさの鯖2匹だ。

短冊切りされた大根と人参が、ボウルに山盛りになった。パッパッと塩を振り馴染ませる。
豆田さんが、水道の脇で鯖を3枚に下ろして皮を剥ぐ。
「鯖は、刺身にする要領ですわ。塩鯖でもええし、湯がいたイカを使う人もあるとよ」。
薄く切った鯖を、たっぷりの酢に漬けて締める。
「昔ばあちゃんが、渋柿から柿酢ちゅうもんを作りよんしゃった」。
「すっぱかねえ」。
「普通の酢じゃ弱いばってん、5倍酢入れよ」。
「よかよか」。
鯖に5倍酢も加えられた。
すり鉢で、味噌と砂糖、白ゴマ、酢を混ぜ合わせる。
「わたしら、分量計ったことないけんねえ。舐めてみてあれが足らん、これが足らんっちゅうて入れちょう」。

「かけ和え」鯖でこくと香りを増す
「かけ和え」鯖でこくと香りを増す

酢がなじんで鯖が白く色づいたら最後の仕上げだ。 タオルで大根と人参の水気をぎゅっと絞り、すべてを丁寧に混ぜ合わせる。 味噌がしみ込むように、手で揉みこんでいくのだ。
「砂糖の足らんとよね」。
「酢もあんまり効いちょらん」。
4人が出来上がりを口に入れながら、それぞれに首を傾(かし)げる。砂糖と酢が足され、また4人の手が伸びる。
「うん、まだだ」。
ゴマがどさっと入る。
「うまかよ」。
笑顔の先には、30人分はありそうな「かけ和え」が出来上がっていた。

前列左は徳川初枝さん、右は水田八重子さん、後列左は豆田絹江さん、右は井手野恵美子さん
前列左は徳川初枝さん、右は水田八重子さん、
後列左は豆田絹江さん、右は井手野恵美子さん

今朝畑で採ったばかりという大根と人参は、みずみずしくて歯ごたえがいい。 脂の乗った鯖が加わることで、こくがでて香りが増す。 何より息の合った4人の「かけあい」がよかった。 井手野の郷土料理「かけ和え」は、みんなで作ってみんなで食べるのが一番だ。

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発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
Photography:Akutagawa Jin  Copyright:Abe Naomi  Design:Hagiwara hironori  Haedline:Anabuki Fumio