

一般的なはちみつは、複数の養蜂家が集めたはちみつを一度大きなタンクにまとめ、ゴミを取り除きます。しかし、この方法では色や香りなどすべてが平均化されて生産者や産地特有の魅力がなくなってしまうのです。当社では、養蜂家が丹精込めて生産したはちみつを巣箱から取り出したままの状態でお届けしたいと考え、管理方法を見直すことにしました。タンクで混ぜずに養蜂家や産地ごとで細かく分けて管理する方法に変更することで、それぞれの個性が活きた味わいを感じていただけるようになりました。とても手間のかかる作業で、商品化できないはちみつも増えてしまいますが、それでも、「最高品質の本物のはちみつをお届けしたい」というのが私たちの思いです。



はちみつを充填する際は、粘度のあるはちみつを扱いやすくするため、60℃近くに温度を上げるのが一般的です。
当社では、はちみつの大切な酵素を壊さないよう、瓶への充填温度を45℃以下に定めていました。しかし糖度が高く、純度も申し分ないルーマニアの「アカシア蜂蜜」には、45度の温度もかけたくないと考えました。その世界最高級とも言える品質を巣から採れたそのままの状態でお届けするため、自社基準をさらに厳しい充填温度35℃以下(巣箱の中と同じ温度)に変更しました。
この変更により、充填効率は2分の1に落ちてしまいますが、さらに味や香りのよいはちみつをお届けできるようになりました。


ルーマニアからはちみつを船で運ぶと、赤道付近を通って日本に到着します。
普通のコンテナで運ぶと、赤道直下では、船室内が60℃以上になり、その高温で蜂蜜が劣化し、天然の味や香りが壊れてしまいます。そのため、山田養蜂場では以前から、高級ワインを運ぶのと同じように、定温(20℃)で保つことができるコンテナを利用して日本まではちみつを運んでいます。もちろん、輸送費はかかりますが、本物のはちみつを皆さまにお届けするという使命には代えられないのです。



蜜を集めて巣に帰ったミツバチは、糖度の低い花蜜の余分な水分を羽ばたきによる温風で蒸発させ、糖度を高めていきます。こうしてようやく糖度80度近くになると、ミツバチははちみつを蓄えた巣房(貯蜜巣)を蜜ろうで蓋をして貯蔵します。この完全に熟成されたはちみつ(完熟蜜)こそが真の「はちみつ」であり、まさに自然界の産物です。
水分の多いはちみつの糖度を高めるために、減圧濃縮窯等で加熱加工されているものがありますが、この方法でつくられた蜂蜜は、当社では、お客さまにお届けできる品質ではありません。
当社ではミツバチによって熟成された味わい豊かなはちみつだけをお届けしています。

量販されているはちみつの多くは、結晶すると商品価値が低下すると考えられているため、結晶しにくく、透明度の高いはちみつをつくるために、高温で濃縮したり、細かなフィルターを用いて花粉をすべて取り除く処理がされています。
当社でも、養蜂場でのはちみつ採取の時、工場での充填時、はちみつをろ過しますが、はちみつの中のゴミだけを取り除いて小さな花粉の粒子が通る構造のろ過器を使っているので、花粉に含まれる栄養素をたっぷりと含んでいます。
私たち山田養蜂場は、余計な加工をせず、不要なもの以外は何も取り除かない「本物の完熟はちみつ」にこだわりつづけてきました。そのため、はちみつの種類や季節によっては結晶したはちみつが皆さまのもとに届く場合もありますが、それが本物のはちみつの証。どれも当社が自信をもってお届けするはちみつです。

山田養蜂場が完熟のルーマニア産アカシア蜂蜜を皆さまにお届けできるのは、ルーマニアの各地にいる、養蜂家を取りまとめているマティッシュさんとの出会いがあったからに他なりません。
マティッシュさんは、おじいさんに養蜂を教えてもらい、子供のころからミツバチに親しみ、ともに生活をしてきた人です。高校の科学の先生をしていた経歴をもち、はちみつの品質管理においても得意分野です。
マティッシュさんがいるからこそ、山田養蜂場のルーマニア産アカシア蜂蜜を皆さまにお届けできるのです。


山田養蜂場とルーマニア産アカシア蜂蜜の出会いは約20年前。
その頃のヨーロッパのアカシア蜂蜜といえば、ハンガリー産のものが有名だったのですが、実は、相当な量のルーマニア産のはちみつが、ハンガリーを経て流通していました。
実際に、ルーマニアのアカシア蜂蜜の最大産地であるトランシルバニアを訪れると、その流通量もうなずけるほどの大自然が広がっていました。

アカシア蜂蜜は、一般的には、糖度が上がりにくいと言われています。その理由は、アカシアの花が開花している期間が1週間ほどと非常に短いためです。開花の期間が短ければ、花蜜を集められる期間や熟成させる期間も短いため、糖度が上がりきらないこともあるのです。
ルーマニアでは、同じ種類のアカシアの花が、1ヵ月間咲き続けます。その理由は、ルーマニア独特の地形にありました。緯度と標高のわずかな差によって、アカシアの花が開花する時期にズレが生じます。さらに、その一つ一つのアカシアの森の大きさが日本では考えられないほど広大であるため、ミツバチがはちみつを十分に熟成する時間ができ、ルーマニアのアカシア蜂蜜は82度という驚異的な糖度が生まれるのです。


また、自然環境に加え、この養蜂を可能にしているのが「トレーラー養蜂」です。トレーラー養蜂とは、その名の通り、トレーラーに色彩やかなミツバチの巣箱を何十個も設置して行う養蜂です。
アカシア蜂蜜の採取時期、養蜂家は、アカシアの開花を追って、南から北(暖かい地域から寒い地域)へと移動するため、ミツバチの巣箱の横で寝泊まりをし、朝早くから夜遅くまで、つきっきりでミツバチの世話をしています。トレーラーの中は、生活するのに十分な設備が整っており、ベッドやソファー、キッチンなどが養蜂作業場とは別に設けられています。