八畝にも、現実の厳しさはある。
集落の狭い田畑では、満足のいく現金収入を得ることは難しい。
和子さんも富子さんも、以前は蚕を飼っていたし、農閑期になれば、工事現場でも働いた。
働き詰めだった和子さんなのに、こんなことを言う。
「今の人は、大変ぞね。あくる日も仕事じゃけん、夜はさっと帰る。
昔は二日も三日も酒飲んで、バケツ叩いて呑気なもんじゃった。
七夕にはとうきび焼いて、半夏(はんげ)の日はミョウガの葉で包んだ団子を作ったんじゃ」
和子さん宅の縁側に座って眺めていた怒田集落が、ぼんやりしてきた。ひとつ、ふたっつ、家の明かりが灯った。
帰り道、田んぼの水を見に来ている富子さんの姿をまた見かけた。
今週末には長男が帰ってきて、一緒に田植えをするのだと言う。
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田植えをしていた和子さんと 水の見回りから帰る富子さんが
出会って立ち話。 「美人に撮ってよ」と笑いが弾ける |