西村亀子さん
ギンブロウは「銀不老」と書く。 高知県内でも、この地域だけで伝えられてきた豆だ。 竹で支えをしてやると、蔓を延ばして人の背丈ほどの高さになる。 大豆くらいの大きさの黒い豆は、銀のような光沢があり艶やかだ。 不老とは、この豆がそれだけ滋養に富んでいるという意味合いだろう。
近所では、ゼンマイとイタドリ採りの名人として知られる西村亀子さん(67)が、 彼岸には必ず作るというなべもちを、ギンブロウを使って作ってくれた。
米も豆もすべて自家製だ。 「粘っこくて腹持ちがええ」から、田んぼ仕事の合間に食べることもある。 まず、もち米2.5合とうるち米0.5合を、3合の米を炊く時の要領で炊飯器で炊く。
「そん時、水はきもーち少なめで炊くのがええ」。
豆を炊くのは圧力鍋だ。短時間で美味しくできる。
「ギンブロウは、1合カップに半分くらいの量やね。たっぷたっぷの水(豆の3倍)をはって、火にかけよる」。
「圧力鍋の重りがシューシュー言い出したら、15分くらいそのまんま。火を止めてからは、10分くらい蒸らします」。
鍋から勢いよく噴き出す蒸気とともに、豆特有の香りが広がってきた。
「さ、柔らかくなったろか。砂糖入れるよ。なんっちゃ計らあせんのよ」。
小匙スプーンにして3杯分程の砂糖と少量の塩を、何回かに分けて味を見ながら豆に加えていく。 水分がなくなるまで火にかけ、豆がふっくらしたら、すし桶の中でご飯と丁寧に混ぜ合わせる。
石臼で大豆をひいて、きな粉を作る
最後に、きな粉をまぶして
「なべもち」のできあがり
「なべもちを団子にするんは、あんまり大きいのもいかん。 手の中でまん丸に転がして、塩をちょっぴり加えたきな粉をまぶして出来上がり」。
10個のなべもちが完成した。
「鉄鍋で炒った大豆を、石臼でゴンゴリゴンゴリひいた」というきな粉は、きめが細かくて大豆の香りが香ばしい。 ギンブロウは、砂糖控えめながらも、旨みがちゃんと沁み込んでいる。
これまで、自家用に作られてきたギンブロウが、最近は店頭に並ぶようになった。 山間の傾斜地でたくましく育った豆が、別のどこかで根を張る日がやってくるのだろうか。
「高知県長岡郡大豊町」2
TOP
1
2
3
4
5
6
7
「川又地蔵尊地蔵堂」
発行:
株式会社 山田養蜂場
編集:(C)リトルヘブン編集室
Photography:Akutagawa Jin Copyright:Abe Naomi Design:Hagiwara hironori Haedline:Anabuki Fumio