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リトルヘブン

大澤ハキさん(76)の「けの汁」/くたっと煮えて、一口ごとに違った味わい

 1年に1度、旧暦の小正月にいただく郷土料理「けの汁」。大澤ハキさん宅では、前日の朝にはすべての材料を切りそろえ、後は煮るだけという状態になっていた。

 「昨夜、鍋に半分の水入れてな、昆布10枚くれえ浸しておいたんだ。材料は、ごぼう1本半、白いコンニャク2つ、人参は色っこ付けるんに入れるから半分、油揚げ2丁。全部を2センチくれえの角切りにするの。他に、さつま芋は薄い乱切りだ。蕗とワラビは、どっちもひと掴み分、塩漬けを水で戻したの。戻し方ば教えるべか。バケツさ入れて、水を夜はちょろちょろ出して、昼は止めて、3日くれえ置いとくの。井戸水だば凍らねえように、夜出しっぱなしなんだわ。ゼンマイもひと掴み、乾燥したもんを戻すんだ。これもな熱湯ん中さ入れて1日置いて、次の日また熱湯ん中さ入れて置いて。3日間やりゃあ戻る。んだべひゃ、手間かかるっきゃ」
 戻したゼンマイ、ワラビ、蕗も2センチ程に切ったら、後は煮るだけ。鍋を火にかけ、出汁用の昆布を取り出す。まず、ごぼうを入れてグツグツいったら、顆粒の出汁少しと味噌をお玉半分ほど入れ、コンニャク、人参、蕗、油揚げを入れる。柔らかくなったら、さつま芋を加えて更に煮る。「芋は、嫁っこに来て、他の人のを真似っこして入れることにしたの」。最後に、ワラビとゼンマイを入れて、少し煮たら出来上がり。

「けの汁」

翌朝もう1度温めた大澤ハキさんの「けの汁」

大澤ハキさん

大澤ハキさん

 その日は食べずに、翌日の朝一番に神棚と仏壇にお供えをした後で食べる。1日置いた「けの汁」をいただくと、程よく、くたっと煮えて味が浸みていた。味噌で煮込むせいか、ゼンマイ独特の香りがまろやかに感じられる。蕗のほろ苦さと、ワラビのねっちりした食感、芋のほくっとした甘み。一口ごとに違った味わいがある。

 「山さ行げなくなりゃあ、食えねえ」と、ハキさんが言うとおり、毎年「けの汁」が準備できるのは、春の山菜採りと保存食作りが出来てこそなのだ。

 
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