正月に供えた鏡餅を、
水に浸して保存しておいたものだ。丸い餅を4つに切り分け、柔らかくなった唐イモの上に置いて、更に蒸す。餅がとろけて、唐イモと絡み合ってきたら火を
止め、大きめの鍋に移す。「冷えたらようつぶれんちゃから、急げよ」。塩ふたつまみと砂糖大さじ5杯を加え、すりこぎで唐イモと餅を混ぜ合わせて
いく。餅の弾力で、次第にすりこぎの動きがゆっくりになる。ねっとりしてきたら、「ねりくり」
上がった証拠。直径40センチほどのしょうけ(平たいザル)に、黄な粉をたっぷりと敷きつめ、そ
の上にネリクリをのせて完成だ。
小皿に取り分けていただいた。餅の粘りと唐イモのホクホクが一つになると、ぽてっとした舌ざ
わりになる。まだ温かさが残っていて、唐イモの香りがふんわり口の中に広がる。
「こげに上手く出来たのは、皆のおかげじゃ。今日の日記に書かんとな」
きみえさんの満足気な顔を見て、みんながほほ笑んだ。 |
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(左から)大塚鶴一さん、渡辺きみえさん、
緒方敦子さん、
桜井洋子さん、二見峯子さん |
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