TOP
リトルヘブン
正面玄関を入ったところに、歴史を感じさせる写真が貼ってある。おかっぱ頭の女の子や花柄の ワンピースの子、スーツを着た男の子もいる。昭和26年に開校して以来の卒業生だ。「俺の父さんが 写っちょうよ」「うちのお母さんは、今と違って痩せてて別人だあ」。子供たちはここにきて、若 かりし頃の父や母の姿を見つけ出すらしい。
3年生の坂元賢史(けんし)くんは、鹿児島水族館で働くのが夢だ。家では、おばあちゃんがイカンテ作りをしている。 「作るんは手伝わんけど、鳥を追い払うんは手伝っちょるよ。家ん中から望遠鏡で見てる。時々な、ばあちゃんが爆竹でバー ンってやるけど、すぐにまた鳥が来よる」生き物の話をする時、賢史くんの瞳はぱっと輝く。
国富町立北俣小学校は、全校生徒39人の学校だ。3月29日に最後の卒業生10名を送り出して閉校する。
校庭の木々が緑に覆われる頃、賢史くんは統合する町立八代小学校へ通うことになる。
リトルヘブン余録
三根正則さんの作業場は、工場かと見間違うほどに多様な工具が、整理整頓して壁に納まっている。 自慢は買ったばかりの万力だ。「ひとりで仕事すっとに、これがあっと二人前になるもんな」。すっかり相棒の扱いだ。
▼農家の道具は創意と工夫に溢れている。リモコン運転の無人トラクターにも驚くが、丸大根を千切りにして棚に撒く 「突っ込み」と地元で呼ぶカッターがそうだ。据え付ける台や木製コンテナは、身長に合わせて全て手製。
▼福田優さんが使っていた千切りを均す小さな熊手や、自家製の茶を揉む竹製の平ショウケ。米子さんが作る丈夫な竹箒。 仕事に必要な道具は、身近な材料でほとんど作ってしまう。
▼細部の意匠にも工夫を凝らし、丁寧に作られた道具は、経済では計れない農家のゆとりを実感させてくれる。
(リトルヘブン編集室:芥川 仁)
芥川 仁 オフィシャルサイト>>>

エッセイ故郷への想い TOP  1  2  3  4  5  6  7 END
発行:株式会社 山田養蜂場  編集:(C)リトルヘブン編集室
Photography:Akutagawa Jin  Copyright:Abe Naomi  Design:Hagiwara hironori