団体さんが筒井神社に参拝に来るとなあ、その団
体の名前の入った小さな幟を持って、道の途中まで
馬車を迎えに行ったもんですわ。男の人は着物に角
帯。腰には煙草入れ。女の人は着物のすそをは
しょって赤い腰巻きが見えよる。情緒ありましたが
な。子どもの私には、おやつをくれよる。嬉しかっ
たわ。母さん方は接待です。神社下にある寺の本堂
に泊まる皆さんに、食事を用意しておりました。
この蛭谷には、いろんな人が来ますのや。ある時
道端で休憩しとったら、男が歩いて来た。聞けば、
会社が倒産して行き場がないさかい、五百円持って
筒井神社へ来た言うんですわ。前に木地師をしとっ
たって聞いてな、じゃあうちへ来い言うたんです。
それから二年間、家に泊めてすべて面倒みました
わ。蛭谷は、明治になると木地師が一人ものうなっ
たんです。
彼は、腕がよろしかった。作る椀や盆が評判に
なって、蛭谷に人が大勢来るようになりました。こ
んな田舎におってもな、いろんな人が訪ねて来て下
さる。それぞれの土地のことを教えて下さる。縁っ
てもんは、大切にせんとあかんのですわ。
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