山田養蜂場 TOP

リトルヘブン

虫の眼里の声 高齢化で、農事組合に水田預けるちょっとくれえ曲がろうと文句なし

展望所から見る夕暮れ間近の散居村

展望所から見る夕暮れ間近の散居村

雪解け水が豊かに流れる用水路

雪解け水が豊かに流れる用水路

農事組合の説明をする入道忠靖さん(左)と安念良倫さん

農事組合の説明をする入道忠靖さん(左)と安念良倫さん

 

 砺波市の太田地区には、現在四つの農事組合がある。太田西部は、三十五戸の農家が組合員になっており、四十五ヘクタールある土地のうち、三十ヘクタールを水田に、残りを大麦と玉ねぎなどの畑にしている。田植えと稲刈り、薬液散布は組合員が協力して行い、日々の水の管理と草刈りは土地の持ち主に任せる。農事組合が、組合員に日当や管理代を支払う仕組みだ。
 「結局、高齢化で個人では田を維持しきれんがですわ。皆して守らんと。はあ七十歳過ぎると、田んぼでこけりゃ起き上がれんがや」

 

 農事組合法人太田西部営農部長の安念良倫(よしのり )さん(68)の携帯電話には、組合員からの連絡がひっきりなしに入る。田んぼを預けた農家にとって、先祖から受け継いだ田を、何とか守り抜きたい思いは切実だ。
 夕方、横山啓一さん(65)が、自分の田んぼの様子を見にきていた。「組合入っとるから、うちとこの田植えはお願いしたんや」と言う。「けどな、当番で、俺も別の人の田植えん時にやったが。ここらの田は、石があったり深かったりで、特徴を知らねえと田植えは難しいんだけどな、ちょっとくれえ曲がろうとお互いさま。文句はなしだ」。そう言う啓一さんから、地域皆で農作業に取り組む気概を感じた。

大嶋武子さん宅の杉の大木

大嶋武子さん宅の杉の大木

昔は燃料、今は掃除

 散居村を歩くと、あちこちでカイニョの林に出合う。大嶋武子さん(80)が、「昔は空が見えんほど葉が茂っとった」と言う庭の杉は、神社の御神木を思わせる存在感。武子さんが子どもの頃、炊事や風呂の燃料になったカイニョの枝葉だが、暮らしが変わり、今では掃除や管理が大変だ。それでも「先月の大風の日、木が守ってくれて、うちの瓦はひとつも飛ばずに済んだがです」と、先祖の努力に感謝する。
 手入れの行き届いた庭や簡素な暮らしぶりを見ると、この地域の人々が先祖から受け継いだ家や土地を、いかに心の拠り所として大切にしてきたかがわかる。強風に吹かれても根を張って家屋敷を守るカイニョが、足を踏ん張って暮らす人々の姿と重なって見える。

砺波市散居村部分略図
 
 
「虫の眼里の声」1 TOP  1  2  3  4  5  6  7 土地の香り家の味