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リトルヘブン

紅(くれない)に染まる平野が故郷の色 藤森 兼明(日本芸術院会員)
藤森 兼明 (ふじもり かねあき)
藤森 兼明(ふじもり かねあき)
昭和十年
富山県砺波市庄川町に生れる
昭和三十三年
金沢美術工芸大学卒業
在学中日展、光風会入選
昭和三十四年〜三十八年
滞米
昭和五十五年
日展特選
昭和五十九年
日展特選
平成元年
愛知県芸術文化選奨文化賞受賞
平成七年
日展審査員就任(平成十三年、平成十五年、平成十九年、平成二十二年)
平成十六年
光風会理事
平成二十年
日本芸術院賞受賞 日展理事就任
東海TV文化賞受賞 紺綬褒章受賞
日本芸術院会員就任
平成二十一年
光風会常務理事就任 日展常務理事就任
中日文化賞受賞 愛知県教育文化賞功労者
平成二十二年
北日本新聞文化賞受賞
東京、名古屋、富山にて
個展二十八回
現在
日本芸術院会員
日展常務理事
光風会常務理事

 昭和十年、私は、富山県の旧東砺波郡青島村字権左島の藤森家に第四子で三男として生を受けました。五月九日が誕生日で、まさに砺波平野が田植えの真最中の季節です。幼い頃から絵を描く事が何より楽しく、また幸せな時間でした。長じて今年七十七才の喜寿を迎えても、この気持は何も変わらず、大変幸せな人生だと感謝しています。
 生家から庄川辺りに出て、合口ダムを渡り向山の急斜面を三十分ぐらい登ると、中腹の見晴しの良い場所に出る。この場所からは、現在の庄川町を扇の要として、扇状地の砺波平野が見渡せます。
 春夏秋冬、この平野は劇的な変化を見せてくれます。早春は田起しに始まり、黒い田が水を湛えて平野全体が水鏡となります。水鏡は天候、時間によって千変万化と変化します。五月の田植えが終わると、この水鏡は早苗に被われ、晩春から初夏に掛けて吹く山からの風に平野全体が波打ちます。これが秋を迎えると、黄金色の色面となり収穫の季節となります。
 この様に変化する砺波平野に、素晴しいアクセントを与えるのが散居村の家の佇まいです。カイニョと呼ばれる家のまわりを囲む屋敷林が、各家を守っている風景は、田畑に立って見る風景と、小高い山腹から見る眺めとでは趣が異なります。
 四季折々、郷里をたずね車窓から見る砺波平野、また丘から見る平野の眺め、これが私の持つ故郷の色であり香です。この砺波平野に生れ育った事に感謝する気持で一杯です。中学高校の頃から幾度となくスケッチしたり、油絵にして残していますが、私が一番好きな時間は、夕暮れ時に陽が西に傾き、砺波平野が逆光に輝く時です。冬雪原と化した平野が紅に染まり、散居村の家々が深い紫色でアクセントとして映えます。七十七才になった今も、思い出と郷愁にかられるのがこの原風景です。
 今後共、自身の画業に対する精進は元よりの事、郷里に対する感謝だけでなく仕事を通じて貢献してゆきたく思います。

 
 
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