はちみつには、ごく少量ですが『ボツリヌス菌の芽胞（がほう）*』が含まれていることがあります。この芽胞は健康な成人には無害ですが、1歳未満の乳児の身体には大きなリスクをもたらします。

*芽胞･･･菌が育ちにくい環境で生き抜くための構造。熱、乾燥、酸、消毒剤、放射線などに対する高い抵抗力を持っています。家庭での通常加熱（100℃）では菌は滅菌できても芽胞が生き残ることがあります。

1歳未満の乳児の腸内環境はまだ未熟です。このため、ボツリヌス菌の芽胞が腸内で活性化し、ボツリヌス菌が増えて、毒素を生成する可能性があります。これは『乳児ボツリヌス症』という危険な病気を引き起こす原因となります。

『乳児ボツリヌス症』は腸内で芽胞が発芽し、ボツリヌス菌が増殖して菌が発生することで発症します。乳児の未熟な腸内環境では、発芽した（増殖できる状態）ボツリヌス菌の増殖を抑えることができず、毒素が作り出されるリスクがあります。この毒素が、赤ちゃんの筋肉や神経に悪影響を与えます。

食べてすぐに症状が出ることは少なく、最初の異常としては、3日以上続く便秘で気づくことが多いです。
初期症状には、便秘のほか、泣き声が弱くなる、哺乳力の低下などが見られます。
進行すると、筋力の低下によって首がすわらなくなる、座れなくなる、目が開けにくくなるといった症状が現れ、さらに悪化すると呼吸困難に陥り、重症化すれば命に関わることもあります。

ボツリヌス菌は、はちみつだけでなく、黒糖やコーンシロップなどにも含まれるため、はちみつ同様、1歳未満の乳児には食べさせないようにご注意ください。

また、真空パックにした食品・缶詰・瓶詰・発酵食品などはボツリヌス菌が増えやすいため、保管・調理方法を必ず守るようにしてください。
なお、『ボツリヌス症』は1歳以上の子どもや成人でも、食品などに混入したボツリヌス菌が増殖して作られた毒素を摂取することで発症（食中毒）することがあります。